コラム

行き過ぎた利己主義への警鐘

3月末から続いた新入社員研修が一段落しました。

未曽有の事態が起こったこの時期に門出を迎えた若者たちへ、たくさんのエールを送らせていただきました。

 

いつも新入社員研修の中で事例としてお話しする実話があります。

 

ある会社で新入社員が入社し、歓迎会が開かれました。

部署のみなさんが参加し、その歓迎会は楽しい時間となりました。

お開きとなり、みんなが駅に向かって歩いていました。

その途中、新人さんが声をあげました。

「あれ?携帯がない…」あちこち探しています。

「さっきの場所に忘れたんじゃないのか?探しにいってこいよ」

彼はたくさんの荷物を持っていたため、先輩がそれらを預かりました。

「行ってきます!」彼は先ほどの場所まで戻って行きました。

 

しばらく待っていると彼が嬉しそうに戻ってきました。

「ありました!さっきトイレに行ったときに〇〇に置いてしまったみたいで、

お客さんが見つけてくれたようなんです!

いや~この携帯、新しく買ったばかりの最新モデルなんですよ~。

ホントに見つかってよかったです~~!!」

彼を嬉しそうに荷物を受け取り、また駅に向かって歩き出しました。

 

さて、この彼の行動をあなたはどう思いますか?

 

自分の気持ちと相手の気持ち

個人の欲求や価値観と全体の欲求や価値観

これらを並べた時、昨今は「個」の想いが優先されがちです。

 

自分の価値観が守られ、自分の欲求が満たされることはとても大切ですが、

行き過ぎた利己主義は人から思いやりや配慮を奪ってしまいます。

 

今、新型コロナ問題でできる限り家にいる、人に会わない行動が求められています。

しかし私たちは自由に動きたいし、人に会いたいし、不自由なく生活もしたい。

トイレットペーパーやマスクも欲しいし手元に置いておけば安心する。

自分は基礎疾患もないし、8割は軽症らしいから例え感染しても大丈夫だろう。

そう考える人が多ければ、全体の利益は守られないでしょう。

 

たとえ自分は大丈夫だったとしても、リスクの高い他の人に感染を広げてしまうかもしれない。

そう考え自分の欲求や利益を押さえる行動を私たちはできるのでしょうか。

 

新型コロナは利己主義に少し傾きかけた私たち人間をまるで試しているかのようです。

 

先の新入社員。

携帯が見つかった喜びや嬉しさを伝えることが悪いわけではありません。

周りの人に待たせたことへのお詫びや荷物を持ってもらった感謝を先に伝えた方がよさそうです。

 

新入社員には自分の気持ちと相手の気持ちを上手に扱うバランスを身に付け、

これからも成長を遂げていって欲しいと願っています。

 

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